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高森明勅
2020.2.12 01:13日々の出来事

くにまもり演説大会

2月11日、「建国記念の日」。
有楽町の「よみうりホール」で第12回「くにまもり演説大会」が開催された。
1100人収容の会場が若者達でいっぱい。
登壇した8名の弁士は皆、20歳代だ。
でも、1290名の応募者の中から第3次審査まで、競争率100倍以上の
難関を突破して来た“強者(つわもの)”達だ。
強者と言っても、例年は圧倒的に女性が多い。
しかも応募者の内訳は、
7対3の割合で男性の方がずっと多いにも拘らず、

そんな状況。


フラットな条件で競うと、いかにこの方面の女性の能力が高いか、を窺わせる。
しかし、今年は珍しく男性陣が健闘して、半数を占めた(それでも辛うじて半数…)。
私はもう何年も、審査員の1人として参加している。皆さんレベルが高くて評価に悩む。
今年の優勝はフィリピン国籍の女性。
「日本における外国人労働者受け入れを議論する」というテーマだった。初めて本選に残った外国籍の弁士が、いきなり優勝した。話の中身については、審査員の中でも賛否が分かれたり、欠点を指摘したりする声もあった。恐らく内容の完成度の高さでは、優勝者を上回る弁士が他にいただろう。しかし、それを凌駕する演説それ自体の迫力、説得力、聴衆を巻き込む力が、評価された。準優勝は新潟の酒屋の跡継ぎの男性。清酒をテーマに、自身がフランスでの清酒コンテストに参加した経験もまじえて、熱く語った。3位も女性。
自分のやや珍しい名字を入り口に、誰もが持つ名字から、
自分と日本の歴史や自然との繋がりを実感できると訴えた。
名字という身近ながら見逃されがちなテーマに光を当てた新鮮さと、
素材の普遍性が評価された。
私は当初、これから教師になることが決まっている大学4年生の女性を、
最高点にしていた。
「地域を愛する心を育てる」との演題。

東日本大震災の傷痕が残る陸前高田市で、ボランティアとして

多くの中高生と触れ合った体験から、郷里の小学校の教壇に立つ
決意を固めた動機を語り、広くどの地域でも、郷土への愛着と誇りと
希望が欠かせないことを呼び掛けた。
悲壮ぶって大きな声を出す訳ではない。
しかし、その言葉が胸の奥に届く。
彼女の演説だけは、不覚にも、何故か涙が滲んだ。

参加している若者達も実に立派だ。
最前列の審査員席にいる私にも、背後に共感の輪が広がって行くのが
感じ取れる。頼もしい。
日本も嘆かわしいことばかりではない。
そう思わせてくれる1日だった。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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